本日、土地取引の決済に横浜まで行って来ました。決済とは、契約に基づいて、所有権移転手続きと代金の清算を同時履行することを言います。
この決済をもって、一連の不動産取引はひとつの区切りを迎えますが、契約から決済に至るまで、原則にさかのぼって売買契約を見ていくと、本来は違う意味合いであることを間違って理解されていることが多くあります。
取引するプロである我々には、慣例、慣行、実務、応用で現実的な対応をする前提の基本をおさえてあることは大事なことですが、一般の方は雑学程度に興味があったら読んでみて下さい。
不動産の取引には、宅地建物取引業者(不動産業者を法律に基づいてきちんと言うとこうなります、以下不動産業者と表記します)が関わることが多く、この不動産業者を規制しているのが「宅地建物取引業法(業法)」です。
この業法では、不動産業者が取引に関わる時、一定事項を記載した契約書面を交付しなさいと定められています。よって、不動産の契約をする時には、契約書が作成され、これに署名捺印をしたら契約が成立と考えるのが一般的です。
しかし、不動産業者が関わるから業法の影響を受け、形式ばったものになりますが、不動産取引そのものは民法を基にして行われます。
民法では、売主が「これを売る」、買主が「いくらで買う」とお互いに意思表示し合致したら契約が成立するとなっています。契約が成立すると、売主は引渡し(現物と登記手続き)の義務が生じ、買主は代金支払いの義務が生じます。また、これと同時に相手方に義務を実行させる権利も得ます。
ここでのポイントは、意思表示の合致のみで契約は成立し、書面を作成し署名捺印をすることが要件にはなっていない点です。売買契約書の捺印が実印でなく認印でも良いのは、このあたりからでしょう。契約書の作成がないと不動産業者は厳しく罰せられますが、契約そのものの効力には影響しません。
この民法の原則のままでも取引を行うことは可能ですが、紛争の予防のため、書面に残しておきましょうということから、契約書を作成することが通常として定着しました。(不動産業者が関わる際は紛争の予防のためにいるのだから、契約書を必ず交付しろ!ということです)
口頭で意思表示をしただけの契約なら、何かの時に言った言わないという水掛け論になってしまい、取引そのものがまともに進まなく、日本中が混乱してしまいますよね。
では、意思表示の合致という点も見てみます。一般的には、契約書を取り交わす日に、売主買主が改めて意志を確認し、契約書へ署名捺印をして意志の合致と見なされていますが、その前にも意思の合致した瞬間があります。
不動産の取引の場合、売主がこの不動産を売りたいと告知し、それに対して購入希望者が申込をします。その申込を売主が受けて承諾した場合、この時点で意志は合致し契約は成立したと民法では考えても良さそうです。
さきほどの業法による書面の交付は、契約が成立したら遅滞無くしろとなっていますので、契約が成立→書面の交付という手順は民法と矛盾していません。
しかし、業法で定められている重要事項説明は契約前にとなってますから、民法の原則のままなら業法違反になってしまいますね。この問題も含めて、一般的な慣例から契約書を取り交わす時を契約の成立とし、申込から承諾までは、意志表示の予約(仮の意志表示)という一歩手前の保留状態と解釈するのだと思われます。
この申込は民法そのもので、撤回は出来ないともなっています。やはり、厳密な運用にしてしまいますと、不動産業者が言う「とりあえず予約で」とか「押さえちゃいましょう」と言葉で、気軽に申込をしてしまいますと、購入者側も大変なことになってしまいます。
このことから、一般的には買主の「購入申込、買付証明」と売主の「承諾」が、法的拘束力がないとか、ペナルティなしとなるのでしょう。契約が成立していないのだから、何も義務も権利もないと。
この基本を厳格に適用すれば、もっと良い不動産取引の現場になるのですが、現実の対応としては難しいのも実務に携わっている正直な感想です。本来は、重要事項説明→申込→承諾→契約となれば、原則通りです。
しかし、これを不動産取引の基本にするには、日本中の不動産業者が意識を数段レベルアップしなければなりません。売主から売却の委任を受ける→業法の重要事項に基づき調査と資料作成→不動産流通市場に提供→買主側の不動産業者が重要事項説明→申込・・・
買主側の不動産業者が、検討する物件を全て調査し資料を作成するのも可能ですが、費用や営業の存続を考えたら厳しい。成約報酬が前提の仲介手数料という報酬体系そのものを見直していく必要があります。
さて、作成される契約書の中身を見てみますと、難しい解約の取り決めなどの他に、一般的には当たり前のことと思われることがたくさん記載されております。
代表的な文言に「買主が代金全額を支払った時、所有権は移転する」というものがあります。この文章を見て、うん?と疑問に思った方は法律のセンスがある方、当たり前だろと思った方は不動産業者に聞いてみましょう。
これは民法の原則ではなく、当事者間で権利移転の時期を定めるための文章であり、本来は契約の成立(意志の合致)により移転すると考えられています。
この他にも、売った買ったという基本的なこと以外に、トラブルにならないよう取り決めをしていきますが、話が長くなってきたので、続きはまた次回に。
しばらく、業務の多忙からコラム執筆をお休みしたので、お詫びとして、少しだけ力作にしてみました。横浜は大都会ですね。神奈川県全体が千葉県とは活気の底辺が違う気がしました。
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